今回は、ユニットバスの“顔”とも言える、ドアについてお伝えしたいと思います。
ユニットバスのドアは、言わば洗面脱衣との境界線です。
できるだけ、周囲のインテリアとも調和のとれた佇まいであってほしいものですね。
ユニットバスのドアは、この20年の間に大きな進化を遂げました。
(冒頭の図は、従来タイプのユニットバス入口段差をイメージしたものです。)
ここではその変遷と、最新のユニットバスのドアについて、国内主要水回り設備メーカーさんの事例を引用させていただきながらお伝えしてまいりたいと思います。
ユニットバスのバリアフリー化
ユニットバスのドアの変遷を振り返るとき、切っても切れないのがユニットバスのバリアフリー化です。
バリアフリーのユニットバスが本格的に販売され始めたのは、今から20年ほど前になります。
当時、私は水回り設備メーカーで物件オリジナルユニットバスの設計業務を担当していました。
マンションなどの建築設計段階から関与することが多かったのですが、特にバリアフリーのユニットバスを納入させていただく物件では、洗面脱衣の床との取り合いはもちろん、設備の排水管との取り合いについても、設計の方をはじめ、現場関係者の方とも幾度となく打合せを繰り返したのを覚えています。
せっかくバリアフリーのユニットバスを採用しても、結果的に入口に段差ができてしまっては元も子もないですからね。
当時は、発売直後ということもあって、まずは寸法的なイメージをお伝えすることに必死でした。
それ以前はと言うと、ユニットバスの入口に段差があるのが当たり前で、「一段上がって、一段下りる」という入口納まりでした。
当時の納まりイメージ(断面)を手描きのスケッチで表現すると、冒頭の図のようになります。
入口ドアの四方には、化粧枠がぐるりと回り、洗面脱衣の床と下枠の間には、巾木が通っていました。
今のユニットバスの入口納まりに比べると、少し野暮ったい印象ですね。
バリアフリータイプのユニットバスの登場によって、浴室に入る際、床の段差を気にする必要がなくなりました。
本当に画期的でした。
ユニットバスのドア 大躍進時代へ
ユニットバスのバリアフリー化と共に、ドアもいっきに進化していきました。
洗面脱衣側に下枠を設けない、フラットな納まりが可能になったこともあって、ドアのバリエーションが増えました。
従来の開き戸と折戸に、引き戸のタイプが加わったのです。
さらに、ドアパネルにも変化が現れ、開き戸では透明な強化ガラスの面材を選ぶことができるようにもなりました。
最近、メーカーさんのショールームに展示されているユニットバスのドアを見ていると、透明ガラスの面材が増えたと感じます。
ガラス面材は、分譲マンションの有償オプションで設定されるケースがありますが、戸建住宅では今だに樹脂面材が主流です。
ガラス面材の展示は、来館されたお客様に少しでも商品を見ていただきやすいように、というメーカーさんの心遣いの表れなのかもしれませんね。
ドア枠の色の選択肢も増えました。
従来のホワイト色に加え、シルバー色やブラック色など、周囲のインテリアに合わせたコーディネートが可能になりました。
進化は、それだけに止まりません。
10年くらい前からは、これまでカビの温床になりやすかったドアパネル周囲のゴムパッキンも見かけなくなりました。
そして、冬場のお風呂に冷気が入り込む原因となっていたドアガラリも、最新のものはこれまでとは違う場所に移動しています。
ちなみに、ひと昔前のガラリは、写真にあるような位置に設けられているものがほとんどでした。
“ガラリ”は もはや死語!?
最新のドアのガラリは、ガラリと言うよりは、スリット状の“換気口”です。
ユニットバスの換気の目的は、浴室内の湿気を含んだ空気を、出来るだけ早いタイミングで乾いた空気に入れ替える、ということです。
*ご参考⇒お風呂をカビから守るコツ(2018年6月15日)
そのため、中の空気の入れ替えの際には、換気扇(機械)を使って強制的に換気を行うのがベストです。
換気扇を使用する際に、重要な役割を果たすのが、換気口です。
ユニットバスで換気扇を回すと、換気口を通って洗面脱衣側の乾いた空気が中に取り込まれます。
ドアの換気口の設け方は、メーカーさんによって異なりますが、国内の主要メーカーさんに関しては、大きく2つのパターンに分けられます。
①上換気タイプ(TOTO/Panasonic)
②縦換気タイプ(LIXIL)
水回り設備メーカーさんのショールームに行かれた際に、ぜひユニットバスのドアの換気口もチェックなさってみてください。
ドア選定でおさえておきたいこと
最後に、ドア選定の際に押えておきたいポイントをお伝えさせていただきます。
すでにご存じの方もいらっしゃるのではないかと思いますが、
それはズバリ!有効開口寸法(特に幅方向)です。
開き戸と折戸の場合、同じW800サイズのドアでも、有効開口寸法が双方で異なります。
開き戸の場合は、ドアハンドルが壁パネルに当たらないように、また、ドアそのものがタオル掛けなどの器具に当たらないように、開き角度を予め調整しているので、有効開口寸法はドアの開き角度と関係があると言えます。
折戸の場合は、2枚のパネルの折り畳み寸法がありますから、その分だけ有効開口寸法が減少してしまいます。
ドア選定の際は、建築条件やお客様の状況、用途に配慮しつつ、有効開口寸法も意識しながら進めていくのがベストと言えます。
まとめ
今回は、ユニットバスのドアについて、今日に至るまでの変遷と、最新ドアの傾向をいくつかご紹介させていただきました。
ユニットバスのドアは、壁パネルや浴槽に比べると地味な印象がありますが、意外と奥が深いのです。
ユニットバス自体は、空間内でほぼ完結してしまうのに対し、ドアは唯一、建築側やインテリアとの接点です。
今回ご紹介させていただいた内容が、お客様へのご提案の際など、何か少しでもご参考になれば幸いです。
最後までお読みくださりありがとうございました。
(写真;TOTO東京センターショールーム/LIXILショールーム東京)
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